釜石の奇跡と釜石の悲劇

東日本大震災で釜石市の小学生は99.8%が助かった。これは群馬大学の片田教授が「いのちを守る授業」として、震災前に子どもたちに「想定にとらわれるな」「最善を尽くせ」「率先避難者たれ」と指導し、子どもたちはその教えを実践し命を守った。防災教育の必要性が実証されたのだった。

しかし、釜石市での被害(死亡)は特徴的なものがあります。犠牲になられた方の65%はハザードマップ警戒エリア外に居住していた人に集中しているということです。400名を超える犠牲者が出た鵜住居地区に関しては80%以上と、「想定にとらわれてしまった」状況が顕著となっています。

ここからは想像でしかありませんが、この真逆の結果が何を意味しているか考えてみたいと思います。

発災したのは3月11日金曜日の午後2時46分、多くの学校は終業していたりしていた時間帯です。帰宅している子どもたちは、平日ということもあり、子どもだけで過ごしている可能性が最も高い時間帯でもあります。すなわち行動判断は子どもたち自身に委ねられていた可能性が最も高い時間帯。逆の言い方をすると、大人の管理下ではない時間帯であったとも言えます。

この「大人の管理下にない」が大きな意味を持つと思います。もし発災があと3時間後だった場合、「想定にとらわれている」大人を説得して避難行動しなければならなかったのではないでしょうか。想定を信じた大人たちを振り切って避難できたのでしょうか。結果は想像でしかありませんが、生存率は下がっている可能性が高いと思います。

 

「大人の管理下に無かったからこそ、子どもたちは助かった」

私たち大人は、この言葉の意味を深く噛締めなければなりません。守る側にいるはずの大人が、子どもたちの命を危険にしている。東日本大震災で多く子どもたちが、大人の管理下で命を失っています。大人の管理下であったがために命を失う。このような過ちは絶対に繰り返してはいけない。大人には、子どもたちを守る責任があります。