2014年8月20日未明に発生した広島市土砂災害の現場へ、31日から調査に入りました。広島県が出している土砂災害警戒エリアと実際の被害範囲、崩落山林の植生などを中心に調査をしてきました。
現場の状況は想像以上に壮絶なものでした。しかし、土砂災害の被害範囲は、表層崩壊部を除けば、県の土砂災害警戒エリア図とかなり合致しているのが確認できました。泥が流出した範囲を含めるとかなり広範囲の被害となりますが、人命への影響範囲と考えると、警戒エリアラインを2軒広げれば守れるエリアが確立すると考えられます。左の写真は県営住宅の被害写真ですが、このアパート自体は警戒エリア外で、警戒エリアラインはこの建物の真横を走っていました。実際に直線的には被害を受けておらず、流れ落ちてきた大量の土砂が建物に衝突し、横に跳ね返る状態で被災していました。ただあまりにもの勢い(落下速度)と土砂の量で、1階部分は大破してしまっていました。
上の写真は、土砂災害現場の上流部の植生を調査した写真です。見ての通り殆どが「杉」が植林されていました。しかし、伐採もされておらず林床に日差しは当たらず草も生えていない状況です。土砂が流出しやすい状況が整っていたともいえます。
上の写真は安佐南区八木8丁目の細野神社です。写真では見えにくいのですが、山の斜面に神社が建てられていたのですが、祠だけを残し、周りはえぐられるように崩壊していました。なぜ祠だけが残ったのか不思議だったのですが、よく見ると社殿後ろのトチノキ(たぶん)の大木がびくりともせずに立っています。落葉広葉樹の根は広く深く張ります。このトチノキが見事に社殿を守ったとしか考えられません。
下の写真は、被災前の航空写真(左側)から被災範囲(崩落範囲)を赤色で表示したもの(右側)です。社殿の左側の樹木(トチノキ)の根が社殿を守ったのが分かると思います。